関之尾の甌穴群(おうけつぐん)

 山の中のほっと開けたところに「滝の駅 せきのお」がある。滝に行くには下におりるらしい。ボランティアのガイドさんをお願いしていたが、滝の様子を見に行かれたそうで、しばらくすると「息があがります」と言いながら現れた。「皆さんはどんな団体ですか?」と聞かれたので「同窓会。昭和23年生まれ」と言うと「私よりちょっと若いですね」と言われた。「とてもそんなふうには見えない。ガイドさんの方がずっと若く見えます」
 ここは庄内川といって、帰ってから調べると宮崎市日向灘に注ぐ一級河川大淀川の上流だ。
 「関の尾の滝」の看板の前で説明を聞く。ここには、3つの良さがある。自然の豊かさ、3つの用水路、そして甌穴群だそうだ。
 「大滝」は昭和33年に宮崎県指定公園に、平成2年には「日本の滝100選」に選ばれている。案内には「甌穴群の間を縫った水が、その先端で滝となります。・・白い飛沫をほとばしらせながら黒い岩を落ちる姿は圧巻です」とある。
 「甌穴・おうけつ」の「甌」は瓶(かめ)のことだそうだ。 ガイドさんが強調されるところによると、霧島山地の裾野より湧き出る清流が、小石や岩石の破片を回転させて、溶結凝灰岩の川床を削り、侵食させてきた。それが丸い形の瓶のような岩が残り、下流にあたるほうに丸い穴ができ、今もその穴には小石や破片がくるくるとまわり、侵食を続けている。その起源は数万年前に遡り、今も侵食は進んでいると言う、地球の長い営みの中のひとこまなのだ。国の天然記念物に指定されている。
 さて、我々の行列は石の道を下に進む。右手が山側だ。赤い屋根の、はにわのような形の「川上神社」がある。
 「女滝」は人工の滝で北前用水路に落とすための物だ。今は水が止められている。
 「展望台」に行くと目の前が「大滝」だ。「幅40m、高さ18m」と書いてあるが、時期によって変わる。素晴らしい滝だ。
 それよりもガイドさんが言われるには「今年7月の梅雨前線による水害は皆さんの記憶に新しいと思うのですが、滝の一部の石が壊れたのです。そのために滝の形が少し変わりました。手前のつり橋も今は通ることができません。ここから見ていただくほかはありません」それは大変でしたねぇ。
 もう少し行くと「男滝」があり、これは洪水の時に北前用水路に落ちるための余った水を捨てる。
 大滝が下に見えると、甌穴群だ。飛び石のように向こう岸に渡れたそうだ。今年の洪水で向こう岸の石が流され、木もなぎ倒され、大きな被害が出た。自衛隊のOBの方々の応援を得て、ようやく滝に観光客が来てもらえるように復興したのだと言われた。 
 広場がある。紅葉した木が美しい。
 ガイドさんが「この木は姫しゃらと言います。紅葉した葉が落ちたあと、木の肌が冷たいのです。夏は気持ちがいいのです」といって、抱きつくように触っておられる。私たちも真似をした。皮をはがれたような肌で、その茶色が、まわりの木とは違って、なんだかおかしい。笑っているガイドさんもかわいい。
 また元の道を帰り、「滝の駅」で、プロが写した見事な滝の絵葉書を買った。
 珍しい景色のこういうところに来ると旅は楽しい。