えんどうがわからない

 雨続きで、畑が柔らかい。谷を歩かれるとぐちゃぐちゃになる。ばあちゃんを一人で畑に行かせて野放しにするのはやめた。
「ばあちゃん、ここ、引いて」とななくさ育成園の実習園に連れて行った。最初の日は「ここは、うちと違う」と言っていたが、3日もすると言わなくなった。玉葱の畝がどんどん綺麗になった。
 今日は「これは、えんどう豆やから、引いたらあかん」と言うと「知らん」と言う。玉葱の方ヘ行って「これ、何?」と訊くと「ねぎ」と言う。ねぎは引かないが、えんどうはわからないので、引いてしまいそうだ。しかたがない。私がえんどうのまわりだけ引くことにした。
 草と競い合って育つので、伸びる?確かに、草が短い中に生えているえんどうは、短い。しかし、株は広がっている。草が大きく長い中のえんどうは、長いし、よく育っている。けれども、いずれ草たちに栄養分を吸い取られ、大きくはなれないだろう。まわりの草を引くと、根もゆるむし、倒れるので、籾殻で周りを囲んだ。こうすれば、ばあちゃんにもえんどうと周りの草の区別がつくだろう。「ばあちゃん、これ、えんどうやで」と言うと「えんどう」と言っていたが、膝で踏みそうになる。「踏んだらあかん。えんどう豆やで」「えんどう」...しばらく進んで「ばあちゃん、踏んだらあかん。これ、何?」「きゅうり」..やっぱりあかんわ。
 草引きに夢中になっているので、何を言っても耳に入らない。バケツを持ってきて「ここに引いた草を入れて」と言うと、えんどうの上に置いてしまった。周りを引いて、えんどうの株だけが剥き出しだから見えるだろうに、目に入っていない。おしりを置いたりする。えんどうくん、ごめんね。踏まれてもどっこい生きているらしい。
 それにしても育成園の諸君には、えんどう栽培は向かないわ。こんなに草にうずもれさせては、育ちません。えんどうと周りの草をより分けて引く、なんて、ばあちゃんに無理なのに、育成園の皆さんにも難しいわ。もう今回限りね。