デイの主任が家庭訪問

 ばあちゃんはこのごろ、午後になると「荒れている」さて、どうしたものか?
 人の動きが気になる。置いてある物が気になる。ばあちゃんが尋ねるから、答えると、また訊いてくる。繰り返すと、ばあちゃんが怒り、机をたたいたりする。しかたがない。聞こえないし、訊いても耳からぬけるし、日本語がわからないし...
 「以前やっていた『編物』をまたやってみましょう。来週から持って来てください」と言われた。でも、マンツーマンでないと、できないよ。
 ばあちゃんは昔は器用にセーター、カーディガン、ベスト、帽子、マフラー、手袋、アクリルたわし、と色々編んでいた。人のぶんまで編んでいた。そのうち、サイズが合わなくなり、「小さいよ。もっと大きく編んでくれないと入らない」と言われたころから、認知症が始まっていたのだろう。一冬中、たわしばかり編んでいたが、最後は「何、してるんや?わからん!」と怒ったので、やめさせた。自分が今、何をしているか、わからなくなったら、もうできない。
 私達が話をしていると、ばあちゃんが応接間にやってきた。おやつを食べたり、お茶を飲んで、ご機嫌だった。「何にも役にたたしまへん」と言い、主任が「いいえ、役にたってますよ」と繰り返していた。
 ばあちゃんが尋ねるのに、私が答えていたら、主任は「親子漫才みたいで、おもしろいですなぁ」と言われる。関西人だから、ね。デイでも、漫才でごまかしたら、いかがですか?まともに返答するから、エスカレートするんですよ。