ふところ手ぬぐい

 午後は私は台所で料理。珍しいでしょ。夕飯の支度がすんでから、パソコンをしようという魂胆さ。
 ばあちゃんは廊下をうろつき、台所に鍵がかかっているのを知ると、玄関から外に出た。私は目の前の窓を開けて見張っているから、裏口から出て「ばあちゃん、雨よ」と言うと、手を脇につけて何か「隠しています」が丸わかり。「何、隠してるの?」と訊くと「隠してません」と言うが、取り上げたらタオルが2本。「家に帰り」と言うと戻ったが、しばらくしてまた出た。今度は手に傘を持っているし、隠していたのはタオルが1本、日本てぬぐいが1本。家出をするには、ずいぶんと軽装だなあ。
 従姉妹に「ばあちゃんは、昼まではこたつにいるけど、午後はあかん」と言うと「あいとんねん」と言う。「飽きている」という意味。そうか、飽きるのか。当たり前だわね。従姉妹は最近、2回も畑に来てばあちゃんを連れて帰ってくれた。「もう夕方やから帰ろう」と言うとさっさとついて帰ってくる。助かる。
 また戻らせて、3時前におやつの「おしるこ」を持って行ってやった。押し入れかたづけ?していたらしい。
 トイレに行くと洗面台のタオルかけに新品の「おしめ」がかけてあった。どこから持ってきた?たぶん、昔、デイサービスに行って持って帰った物だろう。あのころは「おしめなんか、持って帰ったらあかん」と言うと「皆で『一つずつ持って帰ろう』ということになった」と言い訳をした。「言わへん、言わへん」ああ言えば、こう言う。言い訳の天才。それまではおしめなど持って帰る利用者がいないので、スタッフも油断していたのだろう。それ以後、ばあちゃんの目の届く範囲には物を置かないようになり、スタッフも一つ賢くなった訳だ。