歯プニング

 というわけで、ばあちゃんがステイから帰るのを、ポストのところで待っていた。ばあちゃんは怒っている。スタッフがなだめている。「ほら、迎えに来てるよ。一緒に帰ろう」一緒に車に乗っても怒るので「静かにして!」としかりとばす。興奮したまま帰られたら、家で困るので早くしずめなきゃ。
 家に着いても怒っている。着替えておやつにする。もごもご...「ちゃんと噛みなさい」と言うのだが、急に下手になった。食べ終わり、入れ歯を洗う ことにした。普段は朝昼晩の食後に洗うが、おやつのあとには洗わない。まず、下の歯をはずす。ちょっと汚れている。自分で洗うようにしむける。
 次に上の歯をはずす。ずいぶん汚れている。 ? 違う! ばあちゃんの歯じゃ、ない。この前、診療所の歯科で入れ歯に名前を入れてもらったのだ。下の歯には名前があったが、上の歯には無い。第一、色も形も大きさも違う。幅が狭い。どこで入れ間違ったのだろう? 朝昼晩、ご飯を見守るから食べ方がおかしいのに気がついた。たまたま洗ったから、間違っているのに気がついた。
 ステイの事務所に電話してみた。すぐに取りに来られた。見せると「確かに上と下では違いますね。別の人の物ですね」と言って持って帰られた。「ありました」と電話があったので、もらいに行った。「別の人がはめていました」ですって!あはは、と笑うか?
 ぼけたら、自分の物がわからない。あわなくても、わからない。ばあちゃんには小さすぎたのに、なぜ、入ったのだろう?別の人には、大きすぎたはずなのに、どうしてはずれないのだろう?ミステリーだ。 
「夕食後、はずして、洗浄液の入った容器に入れて預かります。朝、はめてもらいます」個人の名前入り容器でしょう?なんで間違うの?さっぱりわからん。
 弟に訊いた。「入れ歯ははずして寝るのと、はめて寝るのと、どちらが正しいの?」「正解は、はずして寝るのが正しい」ありゃーっ、間違ってたわ。