たたかう姿勢

 いのししのことで思う。昨日、見ると、山からうちの畑におりて来る道筋がわかった。まっすぐおりて、もう古くなってぼろぼろの柵を倒すようにして入ってきている。山すその土手に「すべり台」のような道すじがついている。突進してすべりおりた感じだ。
 昔のばあちゃんなら、これを見て怒っただろうね。毎朝、柵を見てまわって、いのししの入り口を探しては壊れた部分を補強していた。一人では釘を撃てないので、私や畑を貸してあげているおじさんと一緒になおしていた。
 また夜になると「かんこ」をすると言っては、古いメリヤスのシャツを裂いてひも状にして、それで「なわ」をない、細い針金をまいたものを作った。下から火をつけると、ぼそぼそと燃えていき、いのししは「山火事だ」と思って逃げて行く。
 それから「鉄砲撃ちの兄ちゃん」に電話をかけて「兄ちゃん、いのししが来たから、見に来て」と言う。兄ちゃんは「またか、ばあちゃんには勝てないな」と思いながらも、来てくれた。もちろん、いつともなしに鉄砲は使えない。
 ばあちゃんはほんとに「いつも!闘うおばあちゃん」だった。それに比べると私たち夫婦は「もう、いのししが相手ではしかたないなぁ」とあきらめてしまう。ばあちゃんのあのエネルギーはどこからきたものだったのだろう。