ケアマネさんの訪問日

 ばあちゃんは機嫌よくデイから帰ってきた。送ってこられても「さよなら」だけで他のことを言われなかったのが、うまくいったこつだ。連絡帳には「福笑いなどをしました。初めは見ていて、途中から参加され、坊主めくりをしました」とある。あ、坊主めくりならわかるのか。
 3時半にケアマネさんが来られた。ばあちゃんは布団で昼寝していた。でもすぐに起きる。廊下を歩きながら「わし、どないしますねん?」と訊くので、これ幸い「お客さんやから、挨拶しぃ」と言いながら応接間に入れる。「あけましておめでとうございます」と言われても返答せず。「ここに座り」と言って斜め向かいに座らせて、お茶を取りに行く。戻ると、ばあちゃんはケアマネさんの隣に移動して密着している。お雛様でもあるまいに...
 元の席に戻して、ばあちゃんにはお茶とおやつを渡し、ほっておいて話を進める。「『わたし、もう、起きひんで』と言うんですが、ステイでも言うんですか」と訊くと「相手にして欲しいんでしょう」とズバリ!そうなんでしょう。でも、相手にしてはいられないんだよね。
 ばあちゃんはおやつを食べながら「おばちゃん、おいしいよ。あんたも食べ」と言う。「僕は『おっちゃん』と呼ばれたり『おばちゃん』と呼ばれたりですよ」と言われた。4時40分ごろになると「だいじょうぶでっか?」が始まった。「何が?」と訊くと「もう、くろなるで。帰れるやろか?」と言う。それがおかしい。以前は「自分が帰れない。ここに泊めてもらえるか?」という意味だったのに、今日はどうやら「おうちはどこ?」「尼崎です」「どうやって帰ってですの?」「車です」「だいじょうぶでっか?もう、くらなるで。ちゃんと帰れるやろか?しんぱいやわぁ」と言う。相手を心配しているのだ。すると「自分はここで泊まる」というのは了解しているわけか?あまりしつこいので「もう帰ります」と言って玄関に出られた。ばあちゃんもついてきて、外まで送って出た。「歩いてか?」と訊いて「車です」と言われたが、見えないので、まだ心配していた。でも、姿が消えると、記憶から消えるので、大丈夫。尾をひくことがない。あはは〜。