こうやって怒る

 あわてて家に帰り、部屋に見に行くとまた寝ている。起こして着替えさせ、お経・ご飯にする。「はい終わり。部屋に帰り」と言うと、また!寝ている。
 ばあちゃんは服を管理できない。私の部屋に置くから山盛りになっている。片付けていると突然ばあちゃんが戸を開けて出てきた。「行くのんか?」と訊く。毎日「行く」と思うんやな。いや、行く日には忘れ、行かない日に行く気になる。紙に書く。
「昨日ななくさに行って怒った。人をたたいた。怒る人は来ていらん。たたく人は来ていらん」昨日行ったのは「ななくさ」ではなく、別のデイサービスだが、ばあちゃんにとってはどちらでもかまへん。このメモを、1行ずつ書き加えていく。「わかりません。わたし、初めてやから、わかりません」メモを持ってうろうろする。「こない書いてあるけど、行かんでもよろしのんか?」「行かれへんのや」と言うてもわからへん。時間つぶしに「怒るからや」と返していたら「わかりません。トイレ行きます」ときた。廊下を徘徊し、トイレ?まぁ、5〜6回は行ったかな?
 こうやって「わかりません」と言いながらうろつくのだ。 これではまわりがたまったものではない。昨日初めて行った施設は、区切りが無く、大きな部屋に各コーナーという感じで、昼寝中の人がいる畳のところもまる見えだった。他のぼけてない人は、こんなわけわからんばあちゃんが怒ると困るやろうね。
 ばあちゃんは「行かんでもよろしのやね?そんなら置いときます」とメモを置くなり...忘れてくれた...「いやなことは記憶から消す」手段として、もうメモは存在しない。ばあちゃんにしては、うまくおりあいをつけて去って行った。これこれ、これこそ「笑って忘れる関西人!」あはは〜。
 あれ?下の間に入りごそごそしているぞ。蜜柑でも持って行くのかな?