一瞬、真顔になる

 ばあちゃんがデイから帰る。「な〜んにもわからへんな、わかるか!」である。「わからんでも生きていける。笑ってごまかせ関西人!」だ。廊下で「どないすんねんや?」と大声出すので「おしっこしてから、おやつにしよう」と言うと「わかるか!」と怒る。「私はおやつ食べるんやけど、あんた、どうする?」と言うと、一瞬、真顔になった。内容を理解したのだろうか。おとなしくトイレに入った。が、やっぱり、中では「な〜んにもわからへん」と怒っていた。
 手を洗い、着替えておやつにする。ひまわりちゃんお手製のマドレーヌだ。「おいしい?」と訊くと「おいしい」と言うお返事。
 食べ終わり、私がえんどう豆をむいていると、静かに座って見ている。ステイの事務所気分らしい。「これからどないしますねんや?」と言う。「雨ふりで仕事なし」と言うと、しばらくして「どこで寝ますのんや?」「あっち」「食事もあたりますのんか?」「はい」ますます、ステイだ。
 えんどう豆をむいていると、単純作業で眠くなった。ばあちゃんは見ていて「こぼれまっせ」と言う。「手があたっとる」と言う。ざるにかけている手を気にしてくれていたのだろう。そのうち「部屋に行きます」と言って、行ったと思うと寝てしまった。ずいぶんらくになったもんだ。