入れ歯

 起きたので、しそジュース牛乳割りを飲ませる。小さいパンを渡し、一口食べて!おかしい!「口、開けて!」歯が無い!下の入れ歯が無い。「また、はずしたの?探し!」と言って、一緒に部屋に行く。
 無い!枕の下には無い!
 布団の下に、ちり紙で包んだ小さな物がある。「開けて!」と言う。1枚目をほどいて、2枚目をほどくと、入れ歯ではない。もっと小さい。3枚目、4枚目をほどくと、梅干だった。さっき、台所のテーブルで何かを触っている音がしたのだ。ミニパックを開けて、梅干を1つ出し、なめて、あかんから紙に包んだわけだ。ちゃんと布団の下に隠している。すばやい!
 入れ歯は無い!マットレスの下にも!無い!縁側の箪笥のガラス戸も開けてみた。無い!「歯が無いから、食べられへん!」でおやつは終了だ。
 ばあちゃんをほっておいて、パソコンをする。のぞきにくる。書類を入れた箱がいろいろあるが、ばあちゃんは手近な「たたかうおばあちゃん」の箱を触る。読んでみる?これ、ばあちゃんの「ぼけっぷり日記だ〜」と人には説明しているよ。でも、書き始めのころから「自分のことだ」とは思っていなかったなぁ。それがわからないほど、ぼけていた。