私の場合は

 私もそれはわかる。それが安永さんや「つどい場さくらちゃん」の旅の醍醐味だというのは賛成である。「迷惑をかける」なんて心配はしなくていい。それぞれが「学び」の旅である。
  
 私がばあちゃんを連れていかないのは、自分がしんどいからである。旅は自分が楽しみたい。
 その上に、ばあちゃん自身が旅を楽しめない。
 楽しめた段階もあった。「つどい場さくらちゃんご一行」が「リフレッシュひろばみどりちゃん」利用の「芋掘りツァー」に来たときだった。小雨降る日で皆はマイクロバスで到着した。芋畑はちょっと離れた休耕田だ。ばあちゃんに「乗って」と言うと「こんな雨降りにどこ行くねん?」とご機嫌悪い。「芋掘りや」
 バスは舗装道路を通り、駐車スペースに着く。順におりる。明美さんが「ばあちゃん、行こう」と手を取ると、前を行く人の群れに気づいたばあちゃんは手を振りほどき、明美さんの前をスタスタ。あとで写真を見ると、小柄なばあちゃんが明美さんをおんぶしている?あはは...「勝手にどこ行くねん?うちの田んぼや!」と思ったのだろうか?
 芋畑に着いた。ばあちゃんは「こんな雨降りに芋掘ってどないするねん?」私が「こんなにあるんや。みんなにあげたらええねん」ましほさんが「おばあちゃん、こんな大きなお芋!」と見せると、ばあちゃんは...どう言ったか、忘れた。あとで写真を見ると、ばあちゃんの顔が、笑っていない!あはは...
 芋を掘りあげて、バスにもどる。皆で有馬温泉に行く。まるちゃんが「あんたら親子、けんかするから、離れて座り。ばあちゃんは前、すももは後ろ」ばあちゃんは「お母ちゃんはどこや?いっつもごんごん言うて怒るねん」とまるちゃんに告げ口している。声が大きいのでちゃんと聞こえる。あはは。バスをおりたら、きよこさんが「ばあちゃん、あんたのことばっかり、気にしてるよ。どこにいるか、ずっと探しているよ」そうかなぁ?
 温泉に入る。まるちゃんがばあちゃんを洗ってくれた。ご飯を食べる。これもどなたかのお世話。
 またバスにもどり「キリンビール工場見学」に行く。試飲コーナーではジュースとおつまみをいただいた。それで無事帰宅。
 しばらくして、ショートのスタッフに「つどい場さくらちゃんが芋掘りに来ました」と言うと「ばあちゃんは『おお〜ぜい、おお〜ぜい、来て、芋、掘って帰った〜』言うてはりました」と言われた。温泉は?昼ご飯は?ジュースは?おやつは?  一切、消えた!残ったのは「芋、掘って帰った」いつも「被害者」なんだから...
 このころはまだその場では「おいしいなぁ」と言えたし「車、ぎょうさんやで〜」と景色も楽しめた。
 
 今は「口から下は元気」状態である。送迎車から「車、ぎょうさん」は楽しめるが、「ここはどこ?今、何をしているの?」はわからないから怒る。散髪に行っても「熱い!痛い!死んでまぅ」と怒りどおしであった。たたくし、蹴るし、かみつく。疲れると機嫌が悪いし、理由は言えないから困る。「旅」は楽しめない。「デイ」でお風呂とご馳走を楽しんでいる。「しょーと」でのんびり自分ペースでやれたらいいと思う。「穏やかに静かに暮らす」が目標である。ひとに「感動」は与えられないが、たまにはにっこり笑うときもある。つまり「手のひらサイズ」が小さくなったのだ。それにあわせればよいのだ。