入れ歯
晩ご飯をたべようとしたら、ばあちゃんは一口入れて、変な顔をする。「ばあちゃん、入れ歯がないやん!」そうだった。おやつ・入れ歯を洗って預かる・昼寝、の習慣だった。飴玉は入れ歯無しでも食べられるから、ご飯の前に入れるのだった。忘れていた。
流しに行って、入れ歯ケースを渡す。ばあちゃんはもごもご。
テーブルに戻ると、ばあちゃんは下側の入れ歯を出してきた。「入れて!」と言うとまた入れたのだが、ご飯がおかしい。最初は食べていたが、途中から、いつまでも飲み込まずに口の中で、前に前に押しやっている。「飲み込んで」と言っても、そのせりふの意味がわからないのだからどうしようもない。
ふと、気がついた。もしかして、ばあちゃんの入れ歯ではないのでは?他人のと入れ替わっていたから、出したのかも?
無理矢理終わって、入れ歯をはずして洗うとき、ばあちゃんの手の横から見ると、上の歯は「ネームプレート」がある。でももう黒いだけで文字が見えない。下の歯にはプレートが無いのだ。ばあちゃんのではない。
すると、ステイが終わって「薬の飲み方を忘れた」と書いたそのときだろう。前にも間違っていたことがあったから。確かめてみる必要がある。