干し柿

 ばあちゃんがデイから帰ってきた。昼寝もすぐに起きてきた。
 私は台所で柿をむいて、かごに入れていた。3本よりのビニールロープを切って、よってあるのを無理矢理開いてすきまをあけ、柿を通していく。10個通せば出来上がりだ。ベランダにはもうずっと以前からの柿を吊るす竿がかかっている。脚立に上がってぶらさげる。それには秘密兵器があって、夫が針金ぶら提げ用の金具を作ってくれている。ロープの上の端を輪にして金具につけて竿にかける。金具のおかげで移動も楽だ。
 ばあちゃんを座らせてテレビをつけていた。私は柿をロープに通していく。しばらく見ていたばあちゃんは「つらくりましょか」と言う。「つる」って?えらいこと、おぼえとるなぁ。無視した。
 3本できたので吊しに行くことにした。外に出る前に、まだロープに通してない柿のかごを、ばあちゃんの手が届かないテーブルの端に置いたのだ。ばあちゃんが立ち上がる音が聞こえた。勝手口に立っている。もどってみると、かごが洗濯機の横に置いてある。賢いようでも、まだ吊せないのはわからない。わからないなら待てばよいのに、自分ではできるつもりで動く。仕事が間に合うかと言うと、間にはあわないのだ。
 ご飯を食べると飲み込まないし「入れ歯をはずして」と言うと口は開けても手が口にいかない。「入れ歯」も「はずして」の意味もわからないのだ。でも「吊るす」と言う。このギャップがしんどいのだ。