「よろしゅう、おたのもうします」

 これはNHK連続テレビ小説「だんだん」の舞妓の夢花さんのせりふで「よろしくお願いいたします」。ばあちゃんが言うのだ。 デイから帰ったとき、私は訪ねてきた近所の人と話をしていた。ばあちゃんは私の横をすりぬけて、自分の部屋に入り、コートを着たまま、かばんと帽子をだいてベッドに入り、寝てしまった。
 暗くなって起きてきたとき、玄関には長いつきあいの方が「お歳暮。ばあちゃんと食べて」と言って来られた。ばあちゃんはコートのまま、玄関に正座して「えらい迷惑かけます。よろしゅうおたのもうします」と言ったのだ。車が見えているので、迎えに来たと思ったのだろう。来た人は「おばあちゃん、元気?」と言って手を握っていた。ばあちゃんはおかまいなく、外を見ている。次にコープの配達の人が来た。
 皆が帰り、ばあちゃんをトイレに連れて行き、台所に呼ぶ。テレビを見せているつもりが「ちょっと見てきたらどないですやろ?」が始まった。あわれな声を出すので、無視した。「聞いてやれば」って?まぁ、あんまりかまわないほうがいいのよ。
 そろそろ晩ご飯、と思ったら、コープの「直送便」で「紙パンツ」の大箱が届いた。戸別配達に限るよ。大きな箱なんだもの。最後に千葉舞浜の友達が送ってくれたお土産と荷物の箱が来た。
 ばあちゃんにご飯を食べさせた。今日は「あっあっ」と言うが、声も小さく回数も少ない。この調子で「あっあっ」といわなくなってくれたら静かで助かる。
 連絡帳に「ボランティアの方の喫茶サービスがあり、ケーキを召し上がりました」とあって、写真が入っていた。美味しいはずなのに、こわい顔をしている。笑わないのは、精神的な退化現象が進んでいるのかな?やっぱり去年の「ベターケアの取材写真」が最高の笑顔だった。