失敗

 ばあちゃんが起きてきた。トイレの前を素通りし、階段をおりようとするところで捕まえてトイレに連れて入る。紙パンツをはきかえてまた寝かせる。
 8時半に起こした。トイレで「おしっこ、出たか?」「出た」と言うので、そのまま、立ってもらってパンツをあげた。いつもならここで便座に腰かけたまま、紙パンツを脱がせて、新しいのをはかせる。今日は台所で着替えさせようと思ったのだ。
 台所で立ったまま「パジャマ、ぬいで」と言ってぬいでもらう。運動神経は大丈夫だから機能維持のためだ。次に左手で椅子の背を持った姿勢で、私がパンツを脱がせる。紙パンツを渡して「はいて」と言って左手に持たせようとすると、おしっこが出た。足の下にマットをしいたからよしとして、なんで?さっきはおしっこ、出なかったのかな?便座に腰かけてすぐには出ないときがあるもんな。音を聞いてもわからないし、まして、ばあちゃんに聞いてもわからない。「出た」か「出てない」かわからない。もっとじっくり確かめればよかった。いつものように、便座に腰かけたまま、パンツとパッチをはかせればよかった。台所まで連れて来てからはかせようとしたのが失敗だった。
 難しいなぁ。いつのまにか、できなくなっていて、いつも、やられてから気がつくのだ。
「ここまで書くか?」と言われるが「このまま、どんどん、ぼけが進んだらどうなるのだろう?」と言うのが、前からあった。「こうなるのだ」ということだ。
 友達の中にも、親のボケがどんどん進んできて「どうしたらいいの?」と思っている人がいる。「相談がある」と言われることがある。答えはみつからないが、ばあちゃんの過去を読んでもらうと「そうなんか〜」「こうなるんか〜」と思うらしい。参考にはなるらしい。
 子どもが複数にいても、親だけで住んでいたり、片方が亡くなり、独居になると、難しい。頭脳明晰であれば、ヘルパーさんや子どもらの援助で暮らせるだろうが、ぼけてくると危ない。「グループホームに入ってもらう」と言っていたが、それなら、早くから利用しているほうが本人も介助スタッフもなじむのが速いと思う。無理して家族が頑張ることはないと思うよ。