カスミサンショウウオ

 山から引いている水道管がひび割れで、修理するまでは水がきていなかった。
 畑の池はどこかに穴があるらしく、だんだん水が減っていく。金魚が真ん中に集まってくる。最初に買った金魚は「金魚すくいサイズ」だったのに、いまや巨大化して「赤いフナ」になっている。ボス!だ。そのまわりを、生まれ時の違う子孫たちがとりまいている。50匹ぐらいになったかなぁ?
 今日は「修理できたよ」と言うので、水を出していたら、カスミサンショウウオの卵が奥の草のほうから浮いてきた。ここに池を掘りなおしたときは、幼生になってからみつけた。上の山からおりてきて産卵したのだ。久しぶりだが、今年もちゃんと産みに来てくれたのだ。すくってみると、もう卵は細胞分裂が進み、細長く伸びていて、これなら幼生になる日も近い。このまま池においておこう。イモリに食われるやつもいるだろうが、生きのびるやつもいるだろう。
 次男が中学生の頃、畑の下段の小さな水たまりに産んでいた卵を持ち帰り、たらいで飼っていた。150匹ぐらい生まれて、ウジョウジョしていた。オタマジャクシとは違って、細長いし、ウーパールーパーと同じ仲間だから外エラがある。爬虫類のイモリとは違う、両生類のサンショウウオである。オオサンショウウオとは比べ物にならないぐらい小さいが、おとなになると、その姿はつるっとして気品がある。
 飼っているうち、共食いもするし、手足も生えて、最後には外エラがなくなり「あ、いちにんまえになった」と思ったら、いつのまにか山に帰ってしまった。次男が言う。「カスミサンショウウオは生まれた池に帰ってきて産卵するんやで。この子らは、たらいに帰って来なあかんようになる。もう飼うなよ」...そうかぁ〜。でも、この小さな水たまりはイモリも来るし、雨がないと干上がってしまうのだ。だから、上の段の池に産卵したときは嬉しかったのだ。山にはまだこいつらが生きている。人類よりも先輩なんだよ。