ズボン

 ばあちゃんを起こしてトイレに行った。着替えを持って台所に行ったつもりが、靴下がない。ばあちゃんにズボンを渡して、はいているうちに取りに行って戻ったら、ばあちゃんは頭にズボンをのせている。両手はズボンの足につっこんで、頭から履こうとして必死である。ほんとに、本気で履こうとしている。なんでや?とか、間違ってるかな?とかは考えないらしい。
 いつもはばあちゃんを腰かけさせて「靴下」と言って靴下を渡して、ばあちゃんが履いてから「ズボン」と言って渡す。ズボンを腰の前で渡せば、足を入れて履く。それを靴下がとんだだけで、私が見ていなかっただけで、もう、どうしていいか、わからない。わからないまま、やるから、無茶苦茶だ。流れ作業で、なんとなく、雰囲気でやっているのだろう。「靴下」や「ズボン」の言葉がわかっているわけではないのだと知った。