午後はまた事業所の所長さん

 ばあちゃんは昼寝をしたままだった。いつ起きるかわからないが、お願いして、私は畑に行った。
 自費ヘルパーさんを紹介してくれた友達が来ていた。隣の畝の人と「苺が食われた」「何でしょう?」「ここに小さな糞があって、苺の種のツブツブが見えるから、何だろう?」「鳥じゃないよね。アライグマかな?」「アライグマって苺も食べるんですか?」と言いあっている。
 「ヘルパーさんにお世話になったけど、今日が最終日だったのよ」と言うと「よかったかな。最初、私も気がつかなくて、あなたのSOSメールが来てから『あ〜、ばあちゃんがいるんだあ〜。これは大変』って探し始めたのよ」と言う。ばあちゃんを知っているからこそ。
 
 帰るとばあちゃんとヘルパーさんは台所にいた。
 ばあちゃんは、一人で冷蔵庫を開けて牛乳を飲んだりして、私がいるとやらせないことをして、ちょっと時計が過去に戻ったみたいだ。今だってできるのだろうが、現に私が外で洗濯物を干しているときなんか、台所に来て、鍋の蓋を開けて指をつっこんでいるのだが、ばあちゃんは手を洗うとか、考えないので、しかたなくトイレも食べることも私が管理している。
 残存能力よりも「持てる力」よりも、安全と清潔を優先している。それは仕方がない。「毎日毎日の暮らし」なのだから。ヘルパーさんも「私は仕事としてしていますから」と言われる。
 「ばあちゃんのようなタイプは初めてです」と言われた。午前中の方とはまったく違う感想ではないか?「では、どんなタイプの方ですか?」と訊くと「『できます、できます』とおっしゃるけれど、実は何もできていない人。または、じっと座ったままで、運動量の少ない人が多いです」あはは、ばあちゃんのように「口から下は丈夫」な人はいませんか?食べるし、しゃべるが、日本語は通じないし、動くが、突然、支離滅裂になるし...
 ヘルパーさんの前だと「怪獣」化していて、見ているのがしんどいよ。「ババゴン」を見るぐらいなら、事前に阻止する。ばあちゃんが「なんどいな!」と言いながら、テーブルをバン!とたたくので、私はその手をピシャッとたたく。乱暴はやめささないと、一緒にいられない。
 ヘルパーさんが帰られてから、また昼寝をさせた。寝てくれないと家事もできない。