水が多い

 一夜あけて、田んぼに行くと、水がたっぷり!昨日、畔寄せしておいたのに、その土が見えない。
 私には想定内である。
 「たたかうおばあちゃん」には「許せない想定外」であったのだろう。「ズッポンしとる!土、あげられへん」と言う。自分が田んぼの中に入って、手で土をあげて、また畦に上がって鍬で土を均して(ならして)いる。また中に入って、鍬を土手に押し付け、堤防を作る。
 私は田んぼには入らない。30歳過ぎて百姓を始めた時に、夫に畦塗りを習った。夫は田んぼには入らず、畔の上にいながら、鍬を使って、前日に寄せておいた土をあげて、鍬で押し付けて堤防にする。
 今頃になってやっとわかった。
 習い初めはえっちらおっちらやっていて、やっとなんとかわかったころにその年の作業が終わる。年に一度の作業だから、翌年はすっかり忘れている。
 今頃になり、寄せた土が水の下にズッポンしていても、昨日寄せたので、それなりに固くなっている。鍬であげるなり、右手へサッとたたいて均す。すばやくすると、土は流れ落ちることなく、斜めの土手になる。なんだ、こうすればいいのか。30年もやっていて、やっとわかった。鍬でたたいて空気を抜き、堤防にしておいて、斜めにたたいて、次に上の部分を平らにする。これも他の人よりひと手間多いが、こうすれば水が多くてもできるんだ。