花山椒

 「JAのお店で花山椒を買った。もっとほしい」という人がいて「あげるから摘みにおいで」と言うとやってきた。
 帽子、さんぐらす、長袖、長ズボン、長靴、薄手の手袋の親指・人差し指・中指の先を切ってはめる。腰にはうちのばあちゃんが作った特製のエプロン型収穫袋をつける。
 まず開始時刻を計る。
 左手で山椒の枝を押さえ、右手で「つぼみに葉を1枚つけて取る」と基本を教える。この木はとげが無いから取りやすいが、とげのある木だと、これより重装備になる。
 一人で作業してもらう。
 昔、ばあちゃんの友達が身山椒を取りにきた。嬉しいのであれこれしゃべる。
 その人が帰ってから、ばあちゃんは「わしの三分の一もよう取らへん!」と言う。
 山椒やさんは「しゃべったり、歌を歌いながら取ると、木が枯れる」と言う。
 そんなことはないと思う。集中しないとけがをする。とげもあるし、山椒は崖のような地盤の悪い場所に生えるからだ。集中しないと仕事にならんのも確かだ。
 今日来た友達は「終わりました。1時間もたったなんて気がつかなかった」と言ってやってきた。ポリ袋に移したのを見せてもらうと「これだけ?」と思うほど少なかった。もう少しはあると思った。私は刃葉を2〜4枚つけても平気だが、彼女は「葉1枚」を忠実に守ったのかも知れない。葉は大きいほど固いので、1枚がよいだろう。
 煮方を教える。たっぷりのお湯でゆでて、ざるにあげる。香りと色を楽しむ。「わあ、かさが減った!」と楽しむ。これを冷凍保存してもよい。
 煮汁は酒と薄口しょうゆ。仕上げにみりんを少し。また「減った!」と楽しむ。これを冷凍保存する。
 昔、ばあちゃんと二人で必死で摘んで、宝塚清荒神さんの佃煮屋さんに持って行って、1kg5000円。もう行かなくなって、ばあちゃんの友達の寿司とうどんのお店のおばちゃんに買ってもらっていた機関も長い。
 その後は売るほど取れなくて、家で煮て配っていた。
 まるちゃんが「つどい場さくらちゃん講演会」をしていたころは、瓶に詰めて売っていた。お客が花山椒の花も佃煮も値段も知らないので、高くつけるわけにもいかず、ただただ、売り上げがあればいいや、という感じだった。このころは夏には赤しそジュースを作って、500mlペットボトルに摘めて300円で売っていた。「ばあちゃんの便秘に効く」と言って待っているお客もいた。
 「へろへろ」を読んでいると、宅老所「よりあい」もバザーでジャムを売る話を書いていたが、さくらちゃんも、布ぞうりだの、ネクタイのポシェットだの、いろいろ作って売っていた。
 ということは、私たちも、「2倍のスピードで働く」おじさんに負けぬことをしていた時期もあったのだ。あはは〜。やってたよねぇ〜。
 ところで、花山椒1kg5000円で買い取ってもらっていたのが、いまだにあまり変わらない。
 1時間で摘んだ目方を量ってごらん。時給いくらになるかな?