弘法大師の半渋柿

 東京の友達から電話がきて「柿が着いたけど渋いよ」という。
 「大久保柿」だから甘いが、たまには半渋がある。
 私たちは見たらわかる。
 ちゃんと甘いのは皮に傷がある。
 友達は「尖ったのが渋い」と言う。
 そうかも知れない。
 爪で丸く傷つけて甘い点々を探しなさい。
 本「たたかうおばあちゃん」の81ページに「弘法大師の半渋柿」を書いておいたから読んでちょうだい。
 「弘法大師の独鈷水」は、弘法大師さまが「お水を下さい」と言われ、おばあさんが「良い水が出ませんねん」と言いながら濁り水を差しだすと、お大師さまはゴックンと飲まれ、「お水でお困りなら井戸を掘ってあげましょう」と言って、お経を唱え、独鈷でエイッと地面をつくと、泉が湧いた。これが今もこんこんと湧いている。
 「弘法大師の半渋柿」は、お大師さまが別のおばあさんに「その柿を下さい」と言われ、おばあさんが「ここらの柿は渋柿です」と言って断ると、次の年から半渋柿になった。それはねぇ、ここらは山の間に家も田んぼも柿もあって、日当たりが悪いから半渋になるのだよ、と私は思っている。