初対面なのに

 今朝も気をつけて見ていたのに、ご飯がつまった。声がおかしい、痰がからんだみたい、と思ったら、次は、クーッときた。あわててご飯を取り上げたが、あかん、吐き出すしかない。昼まで、ティッシュに吐いてはごみ箱に捨てて、こたつで丸まっていた。
 昼には、もう覚えていなかった。「ご飯のあと、水がつまった」のメモを見せたら、「昨日やろ?」と言う。「今朝は水を飲む前につまった。癖になってる」と言うと「わかりません」まぁ、覚えてはいないわねぇ。
 3時過ぎると、退屈でたまらない。「畑に行く。家にじっとしとったら、怒られる」と言う。出て行ったので、ベランダから見ていると、女の子を自転車に乗せた若いお母さんと話している。その人がばあちゃんと別れてから、呼び止めて「ばあちゃん、痴呆症なのよ」と言うと、「はぁ〜」とびっくりしていた。「友達が『大丈夫、あんたの家の前は徐行している』と言うの」と言うと、困った顔になった。「笑い話よ」と言っても、笑えないらしい。経験がないらしいので「読んで」と適当に持って来たら「たたかうおばあちゃん その2」だった。これなら3年も前で、まだそんなに重症ではない。充分笑えると思う。宣伝、宣伝。「こうして皆さんにあげるのは、危ないから覚えておいてほしい、遠くで迷子になったら知らせてほしい、ついでに『あ、うちのばあちゃんもデイサービスに行ってもらおう』となってほしいからね」と言うと「読ませてもらいます」とほんとに緊張したみたい。かわいそうかな?でも、知っておいてね。高齢化社会なんだから。