生大根  生肉

 もうず〜っと昔、遠い親戚のばあちゃんがボケて、お菓子などがあると、あればあるだけ食べるようになった。家族は困って、そこらへんに食べ物を置かないようにした。そしたら、そのばあちゃんは冷蔵庫を開けて生の肉を食べてしまった。家族も大変だが、ばあちゃんもちょっとかわいそう。
 ところが、うちのばあちゃんもやっていることはこれに近い。今はうちの冷蔵庫も、かぼちゃの煮物の小パックと牛乳や調味料ぐらいしか入れていない。かぼちゃは一つだけを残し、あとは食べられている。味噌もなめたような気がする。ジャムのびんは、ふたが固くて開けられないらしい。梅干も減っている。
 そして、ついに、チルドに入れていた肉の解凍中のトレイが、かぶせたラップが切れている。「何かな?」と開けてみたのだろう。食べてはいないが、生の肉だって食べかねない。もう何も置いておけない。
 でも、私は油断する。隙だらけなので、いつもやられてから「あっ、しまった」
 昨日も、ばあちゃんは口をもごもご、くちゃくちゃしていた。おかしいなぁ。何も置いてないのに。「何、食べてるの?見せてごらん」と言うと、口から出してきた。生の大根だ。私が皮をむいて置いていた。それを、りんごのように薄くむいて、噛んでいたのだ。そりゃ、大根だから、生でも食べられるよ。大根おろしに、さしみのけん、大根サラダ。でも、りんご式にむいて、食うか?