早春

 俳句の会で、私の句
  薄紅の馬酔木(あせび)の花に置く雫
  畑打てば首かしげたる鳥一羽
  今さっき愛してきたよと猫が言う
 三句目、何人かが選んでくださり、残りの人が笑うので、私は恥かしかった。題が「猫の恋」だったのだ。皆さんは雄猫の鳴き声に注目されたようだ。
 私にとっての「猫」は、一度も子を産むことなく避妊手術を受け、18年の生涯を、乙女の恥じらいをもったままの飼い猫だった。雄が来ることはなかった。
 もう一匹は、私が幼い頃に家にいて、春3月、桃の節句の頃に、ニャーニャー泣きながら外から帰るや、柱やそのへんに身体をこすりつけ「雄が来たのよ」と報告に来る猫だった。そして、5月5日には、子猫を産んだ。なぜ、報告に来たのだろう?いつも、不思議だった。