こんな、いっぱい生やして!

 畑に行ってみると、ばあちゃんが、どこを引くか思案仲。「ばあちゃん、ここやで」とえんどうの畝に誘導する。えんどうはまだ小さくて10〜20cm。これで、ここらへんの寒さがわかる。俳句の会で尼崎に行くと「あ〜、こんなに大きくなっている。やはり、うちは寒い」と思うもの。 ばあちゃんは、谷に入って、右の畝の手前半分と左の畝の手前半分を引きながら進む。両方に注意を払うと、後ろは見えないから、ひざがえんどうに乗ったり、引いた草を入れる古バケツをえんどうに載せたりする。ばあちゃんと同じ谷の反対側から、私も引いて行く。私は右側の畝だけしか引かないので、進み方は速い。ばあちゃんに近づいてきた。ばあちゃんは「あんた、上手やけど、わし、わからんわ」と言う。誰にもの、言ってるの?「娘」ではないらしい。草引きが嫌いらしい。ばあちゃんは、その畝をやめて隣りへ移動した。私は、ばあちゃんにまかせて自分の畝にもどり、谷の土あげをした。じゃがいもに肥料をやった。ばあちゃんの里でもらってきた乾燥牛糞だ。
 ばあちゃんは、まぁ、とにかく引き終わった。「ばあちゃん、綺麗になったやん」と言うと、いきなり怒る。「こんな、べったらこ、生やして! えらいことして! 知らんわ!」怒る。怒る。どうやら、こんなに草を生やしたのは、自分ではないと、思っているらしい。「ばあちゃん、怒って役にたつか?綺麗になったやん、言うて、喜んだらええやん」と言うと、理解できないので、しつこく怒っていた。