桜の枝

 寒い日が続いていたのに、「暖かい」を通り越して一気に「暑く」なった。畑に出ても、ワイシャツだけで動ける。
 山には、タムシバがあちこちに咲いた。白い花の木がモコモコと立っている。ばあちゃんは、昔、「コブシが咲く年は日照り」と言っていたなあ。「コブシではなく、タムシバだ」と教えてくれたのは、ゴルフ場に勤めていた人だ。どちらもモクレン科の白い花だ。さくら会花見の日に、宝塚の駅前の歩道に植えられて咲いていたのが、コブシだろう。仁川競馬場にもあった。
 コブシの多い年が日照りかどうか、みてみよう。私の見たところ、夏が日照りの年の次の春は、タムシバが少ない。
 歩いていたら、桜の枝をバッサバッサと切っている人がいた。「なんで?」と訊くと「電気工事で、邪魔になる枝を払っている」のだそうだ。もうすぐ咲かんばかりになっているのに、切るなんてかわいそう。それに、桜は切ったらいけないのでしょう。「もったいないから、ください」と言うと、OKが出た。一輪車を持ってきて、小枝をたくさん切っては束にして、友達に配って歩いた。皆「わ、かわいそう」「もったいない」「すぐに咲くわね。嬉しいな」「家にいて花見ができる」と言いながら、わけっこした。