連絡帳は宝箱

 「今日はお花見に行きました」と書いてある。有馬川の遊歩道なんだそうだ。今は桜が綺麗で、5月末からはゲンジボタルが飛び交う。青愛協の「ホタルウォークラリー」には、千人を越える人が集まる。ホタルは500匹以上いるだろうが、人間の方が多いのには、笑えるね。毎晩毎晩ホタルの数を数えて歩く本田三延さんを見かけたら、声をかけてあげてください。腰に「発光ダイオード」の人口ホタルをつけてピカピカしているから、すぐにみつけられるよ。
 連絡帳は幼稚園みたいだけど、ばあちゃんのようにデイであったことを報告できない人を連れていると、とても助かる情報源だ。今は私のことを「この家の主人の奥さん」と思っているばあちゃん。前は「私はばあちゃんの娘よ」と言うと「私、娘は産んでません」と言ったものだ。どこまで正気かわからない。育ててくれたからいいやんか。
 その前は「おまえはええよ。子ども産んで育てたから」と言う。えっ?「ばあちゃんは?」と訊くと「私は男の子と女の子、産んだけど死んでしもた」と言う。ばあちゃんの子どもは生まれて1週間で死んでしまったけれど、目の前の私は? 連絡帳を見ると「今日は七夕なので、折り紙で織姫と彦星を作りました」と書いてある。これで私も殺されて空の星になっちゃったんだね。
 「ばあちゃん、私とは親子関係を切ったらしいよ」と言うと「あら、さみしいわね」とか「ショックね」とか言ってくれる人がいる。当時者は、とっくにそんな気持ちは超越してるのよ。こんなふうに順に忘れてきたのだし、あれよ、あれよ、今日は何だろ?でここまで来てしまった。あ、でも、ばあちゃん、怒らせると、元にもどるよ。命令してくるもん。自分が「一家のあるじ」になる。