手の体操

 昨日の朝ご飯のとき、どうも、つかむのが下手。
 ご飯は一大事。毎回、食べる前に「おはしで、ぱくぱく」お稽古をしてからご飯もおかずも、つまむのだが、下手ねぇ。ちょっとしか、つかめない。ちびちび、口に入れてはだめなんだ。噛まない。適当に量を多めに入れると、もぐもぐしっかり噛んでくれる。
 ふと思いつき、右手をさわってみると、つめたい! 動きも鈍い。これでは微妙な動作はできないわ。畑で草を引くころは、気温も体温も上昇しているのだ。ほんの小さな草でも引いている。
 夕食のとき、手をこすらせてみた。「数えてこすってごらん」と言うと、頑として動かない。指示も届かぬ「貝」になっている。私が手のひらをこすってやると、「痛い、手の皮がむける」と言う。
 では、グーパー(むすんで開いて)をやらせてみると、ぐーぱーぐーぱー、ヒラヒラヒラ〜と私の目の前に手を持ってきた。これには、キレた! ひとを馬鹿にしている。「馬鹿にするな!」で、これはもう、やってられない!
 
 今朝は、自分で手こすりをすることにした。「100回、数えてやってごらん」と言うと、「1.2.3.4」おお、いい調子。「5.6.7.8.9.10」 この「10」で、パーンとたたく! 拍手ではない。これがいかん。まるで、威嚇だ。
 ばあちゃんは、怒ると「どないするのんどいな?」などと喋りながら、目の前で両手をパーンとたたく。たたきながら、手を上から下へおろす。音が大きいし、威嚇しているとしか思えない。職員が若いと、なめている。これでは、ステイで他の利用者と喧嘩になるはずだ。
 「たたくな!」と言ってから「こすって」と言うと、もうこすらない。ばあちゃんには、何故これをするのかが、さっぱりわからないのだから、しかたがない。私が両手を持って、こすることにして、ばあちゃんに数えてもらった。ときどき、もにょもにょ、ごまかしながら、100までいった。
 次に、グーパーグーパーをした。両手で同時に親指から「1.2.3.4.5」と折って「6.7.8.9.10」と開いた。うまくできた。これで、両手の血のめぐりは良いだろう。「お箸でぱくぱく」も、できて、ご飯もたくさんつかめた。今日はまずまず。明日もうまくいくとは限らないのが、たたかうおばあちゃん。