かしこい

 ばあちゃんは昨日からステイだ。さくら会のあと、「6時に迎えに行く」ことになっていた。
 着くと、窓から食堂でご飯を食べている人が見えた。事務所で「迎えに来ました」と言うと、ケアマネさんを呼んでくださった。
 ばあちゃんは事務所に来て、座った。怒ってはいない。よかった、よかった。
 私が「帰ろうか?」と言うと「お母ちゃんと一緒に帰ります」と言う。ケアマネさんが途中まで送ってくださったので「さようなら」を言い、畑を通って帰った。
 ばあちゃんは、着替えて、台所に来てすわる。「ばあちゃん、ごはん食べてから帰ってきたよ」と言うと「食べます」と言う。「ばあちゃん、食べたよ。5時半に食べたよ。2回も食べると、おなか、痛くなるよ」「ほな、やめます」
「そう? どうする?おふろ入る?」と訊くと「待ってます」と言う。「何を待ってるの?」「お母ちゃんが、おふろしてくれるの」「お風呂はもうできてるよ。入る?」「はい」と言って、さっさと服を脱ぐ。「パンツよごれた。洗わなあかん」と言う。「はい、持ってくるよ」と言うとお風呂に入った。
 お風呂からあがって、いすにすわったので、冷たいお茶を出す。「ごはん食べる」と言う。「食べたよ。5時半に。2回も食べたらおなかこわすよ」と言うと「お茶、飲みます」と言う。「はい、どうぞ」と渡して、飲み終わるとまた「ごはん食べる。」「食べたよ」と言うと「9時に食べます」と言う。「はい、9時に、おやつ食べようね。お休み」と言うと「トイレ行きます」と言う。「はい、どうぞ」トイレに入っている間に、おやつ入れに氷砂糖を一粒入れておく。うまくいった。氷砂糖をにぎって、部屋に行った。
 また、来た。「ごはん」今度は、ミニグラスに、しそ牛乳を1杯入れて出す。「おいしいなぁ」と言う。メモ作戦「5時半に、ななくさで、晩ご飯を食べました」、ばあちゃんは「そうかぁ?食べた気ぃせえへん」
 それでも、しつこく「食べる」とは言わないで、ひきさがるようになった。そうそう何でも、ばあちゃんの思うようにはならないって。その後は、1回トイレに来たが、静かにねてくれた。