介護スタッフの個人的見解

 今朝、迎えに来てくださったスタッフに言ってみた。
 やさしいし、人あたりの良い人なのだ。でも、足りない。
 私「ばあちゃんの記憶力は、自分でトイレの電気をつけておいて、私の顔を見るでしょ。ふりかえって、トイレに電気がついているのを見て『誰か、入っとっての?』と訊くんですよ」と言うと「えーっ!」「記憶は1秒です」
 私「目は、ね、口元にご飯粒がついているでしょ。『鏡、見てごらん。ご飯粒、見える?』と言っても「わからん」見えてないんですよ」「えーっ? 本、読んでますよ」「近視です。本は読みます。人の顔は見えていません」「そうなんですか?」「いつも、私が書いているでしょ。近視ですって。ひとの顔はのっぺらぼうです」「はあ」
 私「耳は聞こえていません」「はあ」「文章を言っても、ばあちゃんにのこるのは、最後の一語だけです」「はあ」
 私「メモを見せるでしょ。4行あっても、覚えるのは最後の1行だけです」「そうですか」
 私「読むのも、漢字は読めます。ひらかなは、だめです。てきとうに読むから、『行かない』と『行かれない』というような、細かい所はわからないんです。「てにをは」もだめです。読んでいるようでも、意味がまったく違うようなことになるでしょ」「そうなんですか〜?」
 
 唖然!! まったく、ばあちゃんの実態がわかってもらえていない。
 連絡帳には「本を読んでいます」とよく書いてある。料理・園芸の雑誌らしい。写真をながめているだけでいい。「おいしそう」「綺麗」ぐらいは、ばあちゃんも言うよ。80年も生きてきたんだもの、おべんちゃらは言うよ。ながめている間はおとなしいよ。
 でも、なにか、短い文でも書いて「読んで」と言って、音読させればすぐに「ばあちゃんの実力」なんてわかるものを! 「入れ歯は洗浄中です」というメモが手さげ袋から出てくるが、それを読ませてみたら、わかるでしょう。近視だって、壁にはってある文字を「読んで」と言えば、みつけられるでしょう。また「あんた、読み!」と言われたら、もう、「ばあちゃんには勝てないなぁ!」と思うしかないけれど...「拒否!」という意味だと思うよ。ばあちゃんも、気にいらないことは拒否するからね。
 
 「たたかうおばあちゃん27号」を読んでもらうことにした。表紙にある「しそジュース」をさしあげようとすると、拒否された。「これはだめです。受け取れないことになっています」 べつに「わいろ」のつもりではない。これをつかって「おやつにしそゼリー」なんかを作ればおもしろいかと思ったのだ。「今日はたこやきを作りました。ばあちゃんは『これは美味しいわ』と言いながら、食べました」とあったからだ。「ところてんを作って食べました。これは、すきではないみたいですね」などというのもある。残念ね。私の言うことを、最後まで聞いてくれたら、意図がわかってもらえたのに。それとも、ちょっと強引に言い過ぎたかな。反省!