饅頭

 夜中にばあちゃんがトイレに来て、なかなか出てこなかった。
 朝、トイレに行くと、ゆかにトイレットペイパーにくるまれた物が落ちていた。饅頭だった。トイレに入る前に、おやつ入れから出して握って入った物らしい。あとで食べようと思って、包んだが、落としたまま行ってしまった。
 6時に起きたばあちゃんは、畑に行く気まんまんだ。洗願、お経のあと...
 台所に来たばあちゃんに、メモを見せる。
「便所のゆかに、紙に包んだ丸い物が落ちていました。何だと思いますか?」
ばあちゃんは「わかりません」私「考えてごらん」ばあちゃん「うんこ」
 メモ「普通は、うんちだと思うでしょう」ばあちゃん「知りません」メモ「まんじゅうでした」ばあちゃん「わし、知らんで」
 メモ「トイレにおやつを持って入ってはいけません。紙に包むから、見えなくなって忘れるのです」この「見えなくなって」の部分のひらかなが読めない。ひらかなを見たままの順を追って読む、ということができないので「見えない」とか忘れたが、ウソ読みをする。その結果、違う意味になったりする。
 ばあちゃんは「わし、持って入らへんで」と言う。読めば、理解できて、それなりに反応する。つまり、必ず否定する。「そうかな?覚えてないけど、したのかな?」などと思ったりはしない。「絶対にしてない!」と否定する。
 「ばあちゃん、おやつは口に入れるんやで。ポケットに入れない」と言うと、とても不満そうだ。