まぐろ?

 家に着いたら、4時50分だった。手と顔を洗ってから、台所に行った。
「ばあちゃん、今、何時?」ばあちゃんは、腕時計を見るが、文字盤が土でよごれていて、見えない。「わかりません」と言うので、腕時計をはずし、「柱時計を見ておいで」と言って、ドアの所に行かせた。その間に時計をふいてみると、汚れは落ちたのだ。「何時?」「5時10分前」「4時何分?」これが出来ない。
「ご飯は6時よ。おやつを食べよう」と言って、まんじゅうを1個としそジュース牛乳わりを出した。「ご飯まで、ばあちゃんの部屋で待っとってね」
 さて、それからが大変、じっとしていられない。まぐろか?じっとしていたら、死ぬ?
「トイレ、行きます」だの、「畑、行きます」だの、言いに来る。畑に行くのは止めるが、トイレは黙って行くなら止めたりはしない。いちいち言いに来るのは、デイやステイに行くと「行きます」と言ってから行くのだろうか?
「トイレに何回も行かなくていいよ。おしっこ、出ないよ。そんなに行きたいなら、ばあちゃんの部屋にトイレ、持ってきてあげようか?」と言うと「そんなわけにいきません」と言う。ポータブルトイレがあるのだ。
「晩ご飯まで、じっとしとって!ひもでくくるよ」と言うと、「何もせんかったら、怒られます」と言う。「怒るのは、怒りんぼうのゆきえさんでしょ。私が『怒ったらあかん』って言うてあげる。何も心配はいらん。そやから、じっとしとって」と言うと、ばあちゃんは「死んでしまいます」と言う。「あら〜、てつだってあげます。ばあちゃん、どないして、死にますか?首、つるんですか?このひも、持ってあげましょか?」と言うと「そんなことしたら、あんたに迷惑がかかる」!!!
 まったく、何なんだ? 「何、あほな会話、しとるんや?録音して聞いてもらえ。ぼけとるの、丸わかりや!」と言われた。それは、まずい。ばあちゃんもボケているが、私も虐待してるからなぁ。録音はまずい。
 何、あほな会話?と思われても、これはとても脳を活性化する。ばあちゃんもせいいっぱい応戦してくる。ときとして、ぎょっとすること、笑えることを言ってくる。それより何より、時間稼ぎと、ばあちゃんのエネルギー減らしなのだ。元気が残ると、夜、寝てくれない。