「もう 起きまんのん?」って、まだ夕方よ

 デイから帰ったばあちゃんは畑に行った。夫と私がトラックで畑に行くと、ばあちゃんはじっと見ていた。が、むこうへ行った。と思っていたら、すぐにやってきて「行きますのんか?」と訊く。ばあちゃんは、車が来るたびに「デイサービスから迎えに来た」と思うらしい。「朝に迎えに来る」とか「今は午後3時だ」というような時間との結びつきがないから、いつ見ても「迎え」だと思うらしい。デイサービスの車はワゴン車だが、車の種類や色なんて、ばあちゃんに識別できないわね。「違うよ」と言うと「何、しますのん?」と訊くので「草引きよ」と言うと「どこ、引きますのん?草、おまへん」と言う。ばあちゃん、毎日毎日、引いていたら、草もないわよ。
 それでも、谷にしゃがみこんだので、安心して、私は土手の草刈りをした。ばあちゃんからは私の姿が見えない。
 終わってから、私はご近所に「おばけなんきん」のプレゼントに行った。「ばあちゃん。元気か?」と訊かれたら、ばあちゃんのボケッぷりを話して笑ってもらわなければいけないし、北海道の旅のすごさも話さなければ...遅くなってしまった。
 畑にばあちゃんを迎えに行ったら、もう5時50分だった。ばあちゃんがいない!家に電話すると、夫が「もう、帰ってるで」と言う。あれまぁ。
 私も帰ってみると、台所は真っ暗だ。ばあちゃんが廊下からやってくる。夫の話では「ばあちゃんが帰るなり、やってきて『もう、起きますのんか?』と訊くんや。わしが寝ころがっていたから、朝やと思ったんやろ。夜と朝の区別がなくなったなぁ」ということだ。