「迎えに来る」

 ばあちゃんはステイだ。3時に迎えに行った。
 ばあちゃんは事務室にいた。むこうのほうで「えっ?何や?」と訊いている。「迎えに来るからね、帰ろうね」と言われている。
 ばあちゃんが私のほうへ、やって来た。目の前の私を通り越して「どこ、来とんの?」とキョロキョロする。私は自分の鼻を指差して「ここ、ここ」と言う。ばあちゃんは私を無視して、左右をキョロキョロ見る。漫画だ! あ、車が来ると思っているな。「お迎え」と聞いたから「車」と思ったのだ。無視する。「帰るよ」と言って、私が先に歩く。ばあちゃんは「え?どこ?」と言いながら、ついて来る。外に出ても、どっちに行くかわからないらしいし、まだ車が来ると思っている。角に着くたびに「どこ?」と言いながら、家が見えるトンネルの出口までずっと言っていた。
 家に着くと?普通だ。ばあちゃんが気づく前に、家に入れて、着替えを出したから、ね。