おしっこ

 私が外に出ると、ばあちゃんがベランダの狭いすきまにしゃがんでいる。私は下から「こらー! おしっこするな!」と言うと、聞こえたらしい。立って、パンツをあげながら「何もしてません!」と言う。「パンツ、おろして、何もしてませんは、ないだろ?」と言うと「してません」と言う。ふだんは聞こえないくせに、これは聞こえるんだ。
 家に帰り、夫に訊く。ばあちゃんがトイレから出たので、夫が入った。すると、ばあちゃんがやってきて、トイレの戸をガチャガチャする。電灯がついているから「使用中」だとは、わからないらしい。自分がトイレに入ろうと思うと、さっさと入ってきて、中の間仕切りの戸まで開けようとする。ばあちゃんは夫が入ってすぐに来たから、わずか2−3分でまた来たことになる。完全におかしい。おしっこをしたいわけではない。トイレに行ったことを忘れているだけだ。
 それで、トイレがふさがっていたばあちゃんが、ベランダに出てパンツをおろしたところを私にみつかったというわけだ。