「起きなさい」

 ぐづつき天気の3連休が終わり、またデイサービスだ。ばあちゃんはなかなか起きてこない。8時になって、起こしに行った。
「起きて何すんのん?」と言う。まともに返事をしても理解できない。「服を着るの」と言って、出して見せた。着替えて廊下に来たから、トイレに誘導し、手と顔を洗い、ご飯になった。どうもテンションあがらない。あがりすぎると困るのだが、あがらないのも今ひとつなんだよね。
 ごほん、ごほんと言うので「ばあちゃん、風邪ひいたん?雨が降るのに、外へ行くからやで。今日は病院に行って、入院しような。ばあちゃんがいない間に、私は仕事しとくからね」と脅した。ばあちゃんは無言で食べ終わり、いつものとおり、流しに連れて行き「入れ歯、はずして」で洗う。薬と風邪薬を飲んで「終わり!部屋に行って」とメモ「今日は10月11日 新聞は休み」を渡す。ばあちゃんはへやで、手さげバッグから「次回のお知らせメモ」を取り出し、「10月11日」メモと見比べている。
 そろそろ着替えないと間にあわない。ばあちゃんは「これ、何や?」と言うが「着替えて」と言い、よそ行き着を渡す。着替えて玄関には来たが「何すんのん?」の繰り返し。そして「トイレ」に行っている間に、迎えの車が来てしまった。
「何にもわからしまへん」とばあちゃんが言う。「こんなこと、初めてや」すると主任は「そうですよ。初めてですよ。お風呂とお食事を用意しています。楽しんでもらおうと思ってますよ」ばあちゃんは「わからしまへん。初めてや」と言いながら車に乗り込んだ。