宅老所のばあちゃんたちの芋掘り

 宅老所のばあちゃんたちが芋掘りに来た。例の水戸藩主母子が植えて、ろくに世話もせずなのに、掘るとけっこう大きいし、色も綺麗。なんなんだ? もともとの土が良いのだろうか?ここは、以前はおじちゃんが使っていた畝だ。牛ふん、野菜の葉、燃やした灰、などをどっと入れていたから、土が肥えているのだろう。
 水戸藩主の母は、今日は「水戸が買った土地があったはずだ。帳面に書いてある」とは言わず、おとなしくしていた。もう忘れたのだろう、ね。私が「里芋の、これが親芋。小芋、孫芋」と説明するのを「はい、はい」と返事してくれた。そして、里芋の茎を大事にかついでいた。「これは傘のかわりになります。それから、七夕の日に、この葉に朝露を受けて、その水で墨をすって字を書く」と教えると、また「はい、はい」と言う。
 ばあちゃんたちは、ご機嫌だった。
 ところがうちのばあちゃんは「お客さんやで。挨拶しいよ」と言うと「へぇ、こんにちは」と言ったきり、あっちのほうで草引きをして、しゃべろうともしない。まるで関心がなくなっている。宇宙人も通り越したか?では、何なんだ?
 夜になって、宅老所の施設長からお礼の電話があった。「ばあちゃんたち、帰ってきて、いい顔してたよ。やっぱり、自然の中で、のびのびするのは良いのよ」