餅つき

 今日は餅つきをする。もちつき機械でくるくるまわして、簡単だ。それもたった2臼で合計3升だ。
 昔はおじいちゃんが、餅つきを頼まれて、28日と30日の2日かかってついていた。もちろん、機械でつくのだが、知り合いのおばあちゃんは「杵つきやから、おいしいわ。ねばりが違うわ」と言うのだ。だましたわけではない。機械だと言うのに、信用しないのだ。杵つきと機械の違いは、温度だ。杵つきは、人間が、ぺったんこ、ぺったんこ、とやっているうちに、お餅が冷めてくる。機械でつくと、ふたをしたまま、くるくる回すから、お餅が冷めるひまがない。ちぎるときも、丸めるときも、熱い。
 知人に頼まれた以外にも、親戚や友達にあげていた。だから、餅つきは一大行事だった。数日前から、ばあちゃんは餅つきの「せいろ」を出して、川の少し深いところにつけて、しめらせていた。前日は、もち米を洗い、ドラム缶を半分に切ったかまど2つに釜をすえつけて、薪を用意し、もち箱を出す。
 当日は朝早くから、かまどに火をたいて、一つにはせいろをのせて米を蒸し、もう一つにはお湯を沸かす。「蒸しがあがったで〜」と言うばあちゃんの声で、一家が集まり、回転餅つき機を回す。ばあちゃんが蒸しあがった米を入れる。子供がタイマーのスイッチを入れる。8分待つと、できあがり。じいちゃんが鏡餅を丸めると、子供がうちわであおいで、冷ます。じいちゃんが小餅用にちぎると、皆で丸める。
 その頃を思うと、今は手抜きで、仕事も半分、いや5分の1ぐらいかも知れない。
 ところで、本日の餅つきは、息子と3人でしていたら、ばあちゃんが部屋から出てきた。「ほ〜ぅ」と言う。わかってるの?「うまいこと、しよってやな」と言う。1つ手渡すと「おやつ、くれての?食べてもよろしぃか?」と言う。つきたてだから、のどにつまるほど、柔らかくない。お雑煮のように、とろとろのほうが危ないだろう。