「しんどいねん。それ、食べよか?」

 今朝、ばあちゃんは起きて台所に来た。「今日はしんどぅて、あかんわ。それ一つ、食べよぅか?」と言う。夫がフライパン片手にガスこんろに向かっているのが、見えたのだろう。「しんどい」と「それ、食べよか?」が、両立するのがばあちゃん流だ。
「わかりますか?」と、デイのお迎えの主任に訊くと「は?いえ」わからんの?「しんどい」と言うのを無視して、起こして朝ご飯を食べさせ、よそ行きの服を着せると、ちゃんと迎えを待つし、来られると、いそいそとワゴン車に乗り込むのが常なのだ。「しんどい」のは、寝すぎだったり、空腹だったりする。起きて台所に来たときに自分の思うようにならない状況だと感じたときもあるだろう。そういうところは敏感に察知する。一筋縄ではいかない。88年の生活の知恵は詰っている。
 主任には「春ですから、ばあちゃんが動くのは当たり前です。頑張ってください。人手が足りないなら、手伝いに行きます。ばあちゃんは野放しで、いいです」と言うと「そういうわけにはいきません」と言われる。もちろん「野放し」にすると、ばあちゃん専属にスタッフが一人付き添う必要がある。「畑に連れて来てもらったら、私が連れてますから、またおやつの時間に迎えに来てください」と言うと、大困り!の表情で送迎車は走り去った。脅しすぎたかな?それぐらい、発想の転換をしないと、ばあちゃんに太刀打ちできないって!このごろの、エネルギーの強さ、食事の速さ、歩く速さ、またパワーアップしたみたいだ!!