名塩紙の梳き手「人間国宝」

 知人から「名塩和紙が欲しい」と頼まれたので、人間国宝の谷野武信さんの工房を訪ねた。谷野さんは自宅を新築しているらしかった。「分けて欲しい。書道家が字を書くらしい」と言うと「それなら、白い紙がいいね。今、漉いているのが白です。白い土を入れています」と言われた。
 私の母校の先輩だ。私達の同窓会の通信には「谷野武信さんが人間国宝に選ばれた」のニュースを載せた。2002年の8月のことだ。
 名塩は江戸時代から手漉き和紙が産業だ。山間の狭い耕地では農業だけでは食えない、という事情があった。和紙の原料は雁皮(がんぴ)で、特徴は土を混ぜ込んで漉くことだ。虫に食われない紙ができる。土の色によって、できあがりの紙の色が決まる。名塩紙は金箔を伸ばすときの「箔打ち紙」「藩札」「ふすまや屏風の下張り・上張り」が有名だ。東大寺のお水取りの「おふだ」も作るし「今は京都西本願寺の修復のための紙を漉いている」とおっしゃった。すばらしい伝統だと思う。
 話を聞いていると、女性のグループが見学にみえた。10人ぐらいだった。今は女性のパワーがすごいなぁ。