「宇宙にかえる」

 「ぼけの人を包む、家族、人、地域、社会」の本にある「認知症を通じて心を考える」を読んで思った。80歳以上の80%がアルツハイマー病ということはありえない。つまり知的能力の退化は年をとると当たり前の普通の老化現象だ。それは「人が宇宙に返る過程の一つ」だ。こういう考え方は以前の私が持っていたものだ。「ぼけてもふつうだ。ぼけてもよい社会をつくる」
 ところが去年の夏からのばあちゃんの急激な退化の時期に、私自身がついていけなくなった。講演会で質問すると「脳の病気だ」と言われるばかりで、「ぼけても普通だ」は受け入れられなかったりして、私は身も心もずたずたになった。
 今、この大井先生の「宇宙にかえる」を読むと、とても新鮮に「やはり、そうなのか」と思える。「たたかうおばあちゃん」を書き始めたころの「ばあちゃんは元気、元気。でも頭の中は宇宙人」も「宇宙に帰る途中の人なんだ」とわかると、なんだか、笑えてくる。
 「天国に召される」「極楽浄土にゆく」いろいろな言い方があるが「宇宙に返る」もいいなぁ。「土に返る」のが生き物の普通の命の終え方だと思うが...