「冗談やないわ して」

 ばあちゃんはものを言う時、後ろに「して」をつける。ばあちゃんは運動神経抜群だ。立ったまま、どこにもつかまらないでパンツをはく。パッチだって、ねらいを定めて「えい、やっ」とはく。この運動神経を利用して、急ぐ時はばあちゃんの左腕をとり、たったったと歩く。ばあちゃんは「こけるがな、して」と言いながら、こけない。廊下を歩く時「はよ、行って」と言いながら、ばあちゃんの腰を持って後ろから押すと「こけるがな、して」と言うが、とっとっとっと行く。私は「もの言うのに『して』 は要らんの」と言う。
 今朝は私が「冗談やないわ、して」と言いたい事件だ。
 ばあちゃんは5時ごろから「もう、起きるのん、ちゃいますか?」と来た。私は夜中に新しいパソコンブログを書いていたので眠い。まだ起きる気になれないので、ほっておくと、あたりかまわずごそごそ触りまくり... 静かになった。また寝たんだと安心していた。私が起きた時はそこらにいなかったから、ね。洗濯しながら台所にいたら、勝手口にごとごと音がする。ばあちゃんが子供用の黒い傘を手に入って来た。ねまきだ。「ばあちゃん、どこ、行ってたん?」と訊くと「畑」と言う。「何しに?」「草、引いてました」「手、汚れてないよ」「洗いました」洗うわけないが、手は冷たい。「ねまきも汚れてないよ。草、引いてたら、汚れるやろ?引いてないやろ?」と言うと「引いてました」と言う。髪がぬれている。
 雨は一時やんでいた。いつから出たか?あの時、みてやるべきだったのだろう。
 ねまきを脱がせて、服に着替えさせた。そのまま、部屋に追いやり、朝ごはんは9時。