診療所再び

 診療所に行くとおとなしい。前の所長先生だった。お久しぶりです。ばあちゃんに「年はいくつ?」と尋ねられた。いくつと言うだろうと思っていたら「63」と言った。先生は「えらい若いな」とおっしゃった。ま、そんなもんでしょ。笑えば?薬を待っている間もおとなしかった。
 回覧を持って行くために福祉センターの正門から帰った。ちょうどデイの送迎者が到着したところだった。
 家に帰り、普段着に着替えたばあちゃんは、ためらいもなく台所に来た。テーブルに来たので、冷たいお茶と苺を出した。こんなときは必ず食べ残す。一人で全部食べたら叱られると思っている。
 私が支度をしているすきに、ばあちゃんは出て行ってしまった。畑に行くだろうか?それともどこか施設に行くだろうか?ま、いいや。電話がかかってきたら迎えに行こう。
 診療所からかかってきた。「ばあちゃんが来ています。待合のベンチに座って待ってますから」と言われた。畑から上がると、診療所の通用口にばあちゃんの長靴が見える。受付でお礼を言って「ばあちゃん、帰るよ」と言うと「薬や」と言うので、薬をとりにきている気分らしかった。「さっき、もらったからもういいよ」と言うと「そんなんしたら、怒られても知らんで」と言う。誰に怒られるんや?怒るのは、私しかおらんわ、ね。その私が「もう、もらった」と言っているのにね。おかしな理屈やろ?
 それ以上言ってもしかたないので、左腕を取り「強制連行」の形で連れて出て、そのまま畑に下りた。行ったら草引きに没頭した。