映画「明日の記憶」

 やっと見に行った。今日4回目の上映で4時45分開始。客は20人もいなかった。
 渡辺謙さんも樋口可奈子さんもよかった。アルツハイマー病になったときの描き方もよく考えられていた。群集の中で、突然、頭が痛くなったり「ここはどこ?」状態になったとき、周囲がぐるぐる回ったり、迫ってくるような描写で、なるほど、病気になると、こんな感じなのか?と思われた。もっとも、私も、病気と診断された本人に「どんな感じなの?」と訊いたことがないので、本当のことはわからない。
 診療内科に行ったとき、診断テストをされていたが「名前」「年齢」「今日は何月何日?」に始まり「今から言う3つの物を覚えてください」「野菜の名前を思いつくだけあげて」など、金子満雄さんの本で読んだり、ばあちゃんの介護認定の面接でやられたものと同じなので、ふむふむと思う。認知症を身近に知らない人が映画を見たら、参考になるだろう。
 が後半が描き足りない。会社を退職してから行く所が無い。妻が勤めに出たあと、主人公は家にいるのだが、その表情がさえない。だんだん暗くなっていく。陶芸教室しか行くところが無い。しかもそこで、陶芸の先生にまでだまされそうになる。
 妻の友達が教えてくれたナーサリーホームのパンフレットをみつけた主人公は、自分でそこを尋ねて行く。広々とした景色の良い所、ということは、どこか人里離れた田舎なのだろうか?これが、冒頭のシーン「こじんまりした家で暮らす夫婦と美しい自然環境」につながっていくのか。原作の小説が書かれた時代の制約だろうか?のんびり暮らすにはよいかも知れないが、考え方が古い。それで、帰りに駅の書店に寄って、原作を買ってきた。読んで確かめたいと思う。
 今は「家族の会」もあるし、本人が発言し始めた時代だ。「住み慣れた家で暮らし続けたい」という時代になっていく。渡辺謙さんには、ぜひとも第2部を作って、病気と診断されてからあとの生き方を、また違う形で取り組んでもらいたい。