雨ふり

 畑にいると、曇ってきた。天気予報では夕方から雨だ。洗濯物を入れに帰った。しばらくして、ばあちゃんが一人で帰ってきた。これは珍しい。朝といい、今といい、一人で帰るのは「誰もおらへん。一人で仕事せんでもええ」と思うのだろう。ちょうど雨がふりかけた。「ばあちゃん、雨ふる前に帰ってきて、よかったね」と言うと、中に入った。
 でも、昼ごはんにはまだ早い。私が台所にこもっていると、ばあちゃんはドアノブをガチャガチャしていたが、やがて外に出て裏口に回り、開けようとする。それでも開かないので、門に出て行った。そこに通りがかった人に「わたし、どないしたら、よろしぅおます?」と訊いている。その人は返事に困り、帰ってしまった。
 ばあちゃんはまた畑に行ってしまった。昼ご飯は忘れたようだ。呼びに行こうと思っていたら、雨が降ってきた。今度は帰らない。見に行くと、いない!いや、右の方の、貸し農園の方にいた。えんどうの畝の草を引いていた。背中はしっとりぬれている。「ばあちゃん、雨!」と言うと「はぁ」と言う。わかっていない。