閉める

 昼までお天気が悪かった。ばあちゃんは外へ行かない。私が開けている窓も、ガラズ戸も閉める。また「ばあちゃん、開けて。涼しいよ」とやると「はい」と言うが、しばらくすると、閉める音がする。また開けに行く。また閉める。なんでこんなことしているか?って。ただの時間稼ぎだね。ほっておくと、ベッドで寝るからね。
 しばらくして音がしない。部屋を見ると、ばあちゃんがいない。玄関に靴はある。もう一度見に行って、縁側の障子を開けると、足元にばあちゃんがいた。整理たんすと障子の間に正座している。冬用のもこもこアクリルのエプロンをつけようとしている。既にもこもこのスモックをそれも前後反対に着て、器用に背中でボタンをとめて、汗をかいている。なんで冬用を着こんでいるか?って。たまたまたんすを開けたら、入っていたのを引っ張り出して、着こんでいるだけよ。汗をかいて暑くないか?って。そんなことがわかれば苦労しないって。