きらきら

 朝がずいぶん涼しくなった。ばあちゃんが起きたときに、汗をかいていない。私が開けておいてやるガラス戸を閉めるのはあいかわらずだが、それでも汗をかくほど暑くはないのだろう。
 外を見ると、きらきらの「雀脅し」が風にはためく。丸いプラスチックの板がギザギザ模様になっているらしく、虹色に光る。雀がボワーッと飛び立つ季節だ。田んぼの上はトンボの群れ。せみは「つくつくおーし」に変わり、夜の散歩は虫の音になっている。蛙はもういない。
 ばあちゃんを畑から連れて帰るとき「あの、きらきら、見える?」と訊いてみた。「はぁ」と言う。「雀の脅しやで。雀が稲を食べるねんで。わかる?」と訊くと、反応が鈍い。「どれが稲や?」と訊くと、目の前の田んぼを見て「あれでしょ」と言う。「誰が米を作ってるのん?」「みんな」と言う。「ばあちゃん、田んぼに行かへんやん」と言うと「草、引く」と言う。難しいねぇ。