ほんとに!聞こえない

 昼ごはんは無視した。2時に起こして、トイレに行かせる。便座に座ったばあちゃんは、入り口からのぞいている私の顔を見て「なに、言うとるの?」と言って怒る。私は何も言っていない。監視しているのが悪いかもしれないが、ほっておくと、手を洗わないのでしかたがない。「何、言うとるの?」と言われても、トイレのばあちゃんに入り口から答えても聞こえない。何も言っていないのに、それも聞こえない、という事だ。本気で怒っている。終わって洗面台に来てから「何も言ってないよ」と言って「なんで、怒るん?」と訊いてみる。まさか、おなかが減った?普通は、ほっておくと、朝昼晩、ご飯を忘れる。食べても忘れる、食べないのも忘れる。
 ま、しかたなくご飯にする。終わると、いったん、部屋に戻り、テレビをつけている。今日は朝から「紀子様、男子ご出産」ばかりだ。このごろ、時々、テレビをつけてその前に座っている。見ていても内容はわかっていないだろうが、我慢して座っていられる時間もあるということか。
 しばらくして、玄関に行って長靴・帽子スタイルになる。戸を開けて「雨、ふっとる」と言いながら、下駄箱から傘を出してくる。あ、やばい。「どこ、行くのん?」と訊くと「上」と言う。「ななくさ行き」気分になってしまった。「行かへん、行かへん」と言うと、怒りながら部屋にもどり...寝てしまった。布団の子、だ。夜は寝ないぞ、きっと。