「暮らしのなかの古武術活用法」 

 甲野善紀著 NHKまる得マガジン 2006年
 「最近の日本人の体のもろさは、一昔前とは別の人種かと思われるほどです。
 わたしの武術は、古い文献や伝承を通して古の武術のありようを探求しながらわたし自身が作った武術です。いわゆる古武道(術)と呼ばれる江戸期以前から続いている剣術や柔術、槍術、抜刀術といった、武術の流派を継承しているわけではありません。
 わたしがなぜそうした古伝の動きを探っているかといえば、かつての日本人の体の使い方は、現代のスポーツ選手よりもはるかに優れていたと確信できるからです。すべての分野で機械化が進んでいる現代とは異なり、昔は何をやるにしても体を使ってこなさなければなりませんでした。そのため、必然的に疲れにくく、精度の高い体の運用が求められたのです。たとえば、数十年前でも鑿(のみ)と玄能(げんのう)だけで現代の電動工具を使う作業に匹敵するほどの量をこなせた大工もいたのです。
 現代の思考重視で身体感覚軽視の社会風潮から、ひとりでも多くの方々が目覚め、本来備わっている人間の身体機能の重要さをあらためて見直していただきたい...」
 甲野さんは、この体の動かし方で、日常生活の中でケガを防ぐ方法や、また、高齢化社会の中で、介護者の負担を軽くする方法を開発して紹介されている。NHK教育テレビの番組を見て感激した夫が、本の「アマゾン」で注文して取り寄せた。