12月ステイの申し込み

 ばあちゃんがステイに行くとき、お迎えスタッフに手紙をことづけた。「12月7日に1泊ステイをお願いします」
 トラックでトンネルにさしかかったころ、ケアマネさんから電話がきた。「とれました。ばあちゃんはいかがですか?」「テンションあげないようにそーっと暮らしてます。怒らさないように」と返事してから、嘘だったと気がついた。
 そんなことは無い。この前、ばあちゃんがデイに行ってから、布団を干そうと持ち上げたら、スライスハムの袋が出てきた。はさみで切って開けてある。そのはさみは縁側のばあちゃんの整理たんすのガラス戸を開けて裁縫箱から出して、棚に置きっぱなしの断ちはさみらしい。なんと!いつの間に?
 その少し前、ばあちゃんが家にいて、私はやりたい仕事があるので、監視していなかったら、家の中を徘徊して、しまいにキュルキュルッと音をたてて、下の間(しものま)から出てきた。冷蔵庫を開けているところをみつけ「こらーっ」と言うと「なにもしてへん。あけただけや」と言うけど、まっさらのハムを袋ごと持って行って、はさみで切って開けて中身を食べるんや。これは油断がならない。「テンションあげない」つもりでほっておいても、一人でうろついているうちに勝手にハイテンションになってしまうのだ。応接間で食べていたお菓子の箱を隠し忘れて、持って行かれたこともある。食べたらいかん、わけではない。隠れて食べると、個別包装のポリ袋をどこかに捨てる、それが問題なだけだ。幸い、トイレに捨てられてつまった、ということがないけれど、いつ、やらかすかわからない。